光雲神社の末社日吉神社にお祀りされているイザナミ(伊耶那美命、伊弉冉、伊邪那美、伊耶那美、伊弉弥)は、クニノトコタチから始まる神世七代(かみよななよ)の最後に産まれた女神として記され、イザナキ(伊邪那岐命)と夫婦になりました。
イザナミは愛に生きた女神で、 名前は「誘う(いざなう)女」という意味であり、男神イザナキと女神イザナミで「誘い合う男と女」を意味します。
目次
記紀神話において
イザナミはイザナキとの夫婦の契りの際、愛する夫を前にして溢れる想いを止められず「何て素敵な男神でしょう。」と、女神であるイザナミが先に告げてしまいます。
この結果、最初に産まれた子は不完全な姿のヒルコだったため、葦船に乗せて海に流しました。
その後、高天ヶ原の神々の忠告通り、男神であるイザナキから声をかけられ二人は深く愛し合い、多くの国々や御子神を次々と産みました。
しかし、イザナミは炎の神ヒノカグツチを産んだ時の火傷が原因で、死者のいる黄泉の国へ逝ってしまうことに。
イザナキは愛する妻を連れ戻しに黄泉の国に向かいましたが、「私はすでに黄泉の食べ物を口にしていたので、戻りたくても戻ることは難しい」と、イザナミは御殿の扉越しに告げます。
それでも夫イザナキは諦めずに懇願したものの、この時イザナミは全身にウジが湧き八雷神(やくさのいかづち)が憑りつき会えるような姿ではなく、すでに黄泉の国の住人へと変化していました。
それでも夫に会いたい一心で、「外に出てくるまでは、絶対に中を覗かないでください。」と約束をし、黄泉の国の神様に夫に会えるように申し出ることにしました。
しかし、待てども戻る気配のないことにしびれを切らしたイザナキが、会いたい想いを止められず約束を破って中を戸を開けて覗くと、そこには八雷神の憑りついたイザナミの恐ろしい姿があったのでした。
イザナキは驚きのあまり音を立ててしまいます。
見られたことに気づいたイザナミは、夫が約束を破ったこと、醜い姿を見られたことに激高しました。
一番見られたくない人に、一番見られたくない姿を見られた屈辱。
愛するが故に許せなかったのです。
怒り狂うイザナミに恐れをなした夫イザナキは一目散に逃げ去りますが、イザナミは黄泉の国の軍勢を放ち追いかけました。
何とか逃れ黄泉の国の出口「黄泉平坂(よもつひらさか)」まで来たイザナキは、大きな岩で出口を塞いでしまいます。
その大岩に向かいイザナミは「愛する夫よ。このような事をするならば、そちらの国の人間を1日1000人くびり殺しましょう。」と言い放ちました。
イザナキは「愛する妻よ。それならば、1日1500の産屋を建てよう。」と応えました。
ここから、人の「生」と「死」が生まれ、イザナミを別名チシキノオオカミ(道敷大神)と呼ぶようになりました。
イザナミは夫を心から愛していました。
愛していたからこそ、約束を守ってほしかったし醜い姿も見られたくなかったのです。
怒りに我を忘れてイザナキを追いかけていたイザナミでしたが、大岩を前にして愛に目覚めたともとれます。
女性から声をかけると「事は成就しない」というヒルコの前例があったにもかかわらず、女神であるイザナミは自ら先に声をかけてしまいます。
この事が意味するのは、夫婦神が大岩を挟んで言い合った事は「成就しない」 という事ではないでしょうか。
イザナミは最後の最後で愛に目覚め、黄泉の国の大神に相応しい御姿になったのでしょう。
多賀信仰
今現在も滋賀県の多賀大社(滋賀県犬上郡多賀町多賀)のご祭神であるイザナギ・イザナミは「お多賀さま」として親しまれています。
『古事記』にも「伊邪那岐大神は淡海の多賀に坐(いま)すなり」とあり、禊による神生みの仕事を終えたイザナギでしたが、統治の役目を果たさないスサノオに叱責したあと、近江の多賀の地に鎮座したとされます。
これが『古事記』の神話内で神の鎮座地が明確に書かれている最初となります。
『日本書紀』では「幽宮を淡路の州に構りて、寂然に長く隠れましき」とありますが、それが国生み神話の地の伝承がある淡路島の伊弉諾神社(兵庫県淡路市多賀)とされます。
多賀神社は室町中期以降に人気が高まり、「お伊勢七庶熊野へ三度、お多賀様へは月参り」の俚謡も生まれました。
江戸時代には多賀講の信仰が全国に広がり、「お伊勢参らばお多賀へ参れ、お伊勢はお多賀の子でござる」といった俚謡とともに多賀参りが盛んに行われたそうです。
イザナギ、イザナミは諸々の神の生みの親であるため、お多賀さまを信奉すれば、ゆく先々でさまざまな神の守護が受けられると考えられていました。
イザナミの系譜
【神格】
創造神
万物を生みだす女神
大地母神
【御神徳】
火災除け
出世開運
商売繁盛
家内安全
縁結び
夫婦円満
安産・子育て
無病息災・病気平癒
厄除け
延命長寿
豊作・大漁
【別名】
伊邪那美神
伊弉冉尊
伊耶那美
黄泉津大神
道敷大神
伊弉弥命
伊弉那彌命
お多賀様
【お祀りする神社】
花窟神社(三重県熊野市有馬町)
波上宮(沖縄県那覇市若狭)
伊弉諾神宮(兵庫県淡路市多賀)
おのころ島神社 (兵庫県南あわじ市)
多賀大社(滋賀県犬上郡多賀町)
江田神社(宮崎市阿波岐原町)
筑波山神社(茨城県つくば市筑波)
佐太神社(島根県松江市)
三峰神社(埼玉県秩父市三峰)
愛宕神社(京都市右京区)
鷲尾愛宕神社(福岡県福岡市西区)
飯盛神社(福岡県福岡市西区)
英彦山神宮 (福岡県田川郡添田町英彦山)
光雲神社末社日吉神社(福岡県福岡市中央区)
白山比咩神社(石川県白山市三宮町)
玉置神社(奈良県吉野郡十津川村)
丹生川上神社 (中社) (奈良県吉野郡東吉野村)
比婆山久米神社(島根県安来市)
熊野神社(広島県庄原市)
熊野速玉大社(和歌山県新宮市)
熊野神社(東京都新宿区)
熊野神社(佐賀県武雄市)
熊野大社(島根県松江市)
揖屋神社(島根県八束郡)
神魂神社(島根県松江市)
皇大神宮別宮の伊佐奈弥宮(三重県伊勢市)
闘鶏神社(鬪雞神社)(和歌山県田辺市)
熊野神社(千葉県四街道市)
佐太神社(島根県松江市)
二宮神社(静岡県掛川市)
伊射奈美神社 (徳島県美馬市)
伊射奈岐神社(大阪府吹田市山田東)
左右神社(千葉県香取郡東庄町)
山家神社(長野県上田市)
他全国の神社
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