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コンピラシン(金毘羅神)

執筆者の写真: 光雲神社の神主光雲神社の神主

更新日:2024年10月15日


アマテラス

山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神がコンピラ神(金毘羅神)で、江戸時代末期から明治にかけて大流行した俗謡の『金毘羅船々(こんぴらふねふね)』に「追手に帆をかけてシュラシュシュシュ・・象頭山(ぞうずさん)金毘羅大権現・・」で歌われているように、広く庶民に親しまれてきました。

この歌は温泉宿やお茶屋、宴会、料亭、などで舞妓・芸妓と行うお座敷遊び・お茶屋遊びの曲としても知られています。


明治期の神仏分離・廃仏毀釈が行われて以降は、オオモノヌシ(大物主)と習合され、山の神、海の神、船の神として全国に約600社ある金刀比羅神社に祀られています。

金刀比羅と称する神社は、現在、オオモノヌシを祀っていることが多いですが、中には「金」の名からカナヤマヒコ(金山彦神)を祭神とする神社や崇徳上皇を祭神とする神社もあります。



  目次




金比羅神を祀る総本宮

香川県琴平町の金刀比羅宮は全国に約600社ある金刀比羅神社(ことひらじんじゃ)の総本宮となっていて、修験道の役小角(えんのおずぬ/神変大菩薩)が香川県象頭山(琴平山)に登った際に金毘羅(クンビーラ)の神験に遭ったのが開山の由来とされています。


他の説として、オオモノヌシが象頭山に行宮を営んだ跡を祭った琴平神社から始まり、中世以降に本地垂迹説により仏教の金毘羅と習合して金毘羅大権現と称したとするものがあります。


保元元年(1156年)におこった後白河天皇と崇徳上皇の皇位継承をめぐる権力争いによって起こった保元の乱(ほうげんのらん)の結果、讃岐国に配流された崇徳上皇は讃岐で崩御する前年の長寛元年(1163年)に当山境内の古籠所に参籠し、その附近の御所之尾を行宮したと伝えられていることから、崩御の翌年の永万元年(1165年)に金刀比羅神社相殿に奉斎されました。




インドや仏教における金毘羅

金毘羅は仏教において水運の守護を司り、天竺霊鷲山の鬼神で、薬師如来十二神将の筆頭で宮比羅大将といわれます。


宮比羅、宮毘羅、金比羅、禁毘羅とも書き、梵語ではクンビーラ(Kumbhīra)またはキンビーラ(Kimbhīra、「何を恐れることがあろう」の意)で、『月灯三昧経』のサンスクリット原本ではKimpiloと綴られます。


インドのヒンズー教におけるクンビーラは、インドのガンジス川に棲む鰐を神格化した水神ですが、日本には鰐が一般的に生息していないためコンピラ神は蛇と関係が深いとされています。


クンビーラはガンジス川を司る女神ガンガーのヴァーハナ(乗り物)でもあることから、コンピラ神は海上交通の守り神として信仰されてきました。




時代による信仰の形成

明治期の神仏分離以降は、総本宮にならってオオモノヌシが祭神の処は「金比羅」で、祭神が変わらず金毘羅大権現の処は「金毘羅」と表記されているところが多いです。


この神は前述の通り海上交通の守り神の側面が強くあったため、特に舟乗りや漁民から信仰され、一般に港を見下ろす山の上で金毘羅宮、金毘羅権現社が全国各地に建てられているのも、水神であり神の乗り物であったためでしょう。


金刀比羅宮の社伝が建つ象頭山は本来「日和山」と言って、船を出すかどうかを判断する際に日和を見る(天気を予測する)ために利用されている山でした。


また、象頭山が船乗り達にとって重要な目印であった点もコンピラ神が信仰を拡大する要因であったと思われます。



コンピラ神は日本において蛇との関係性があるため海神や龍神と同一視され、雨乞いの守護神として農業神的な側面でも信仰されるようになります。


特に雨が少ない時期では、田植えの時期に干ばつに悩まされることが多く、人々は雨ごいのためにコンピラ神に祈願してきました。



修験道が盛んになるとコンピラ神の眷属は天狗とされたため、全国各地から讃岐国象頭山金毘羅大権現を詣でる「金毘羅参り」の際には、天狗の面を背負う習俗も生まれ、江戸時代に入ると白装束の金毘羅道者(行人)が全国を巡って金毘羅信仰を普及しました。






【神格】

航海守護神

水神

海神

農耕神





【御神徳】

水難除去

火難除去

病難除去

五穀豊穣

厄除け

商売繁盛





【別名】

宮比羅

宮毘羅

金毘羅

金比羅

禁毘羅

宮比羅大将(十二神将)

クンビーラ(ヒンズー教)

キンビーラ(ヒンズー教)





【お祀りする神社】

金刀比羅宮 (香川県仲多度郡琴平町)

出雲分社 (島根県出雲市斐川町)

神戸分社 (神戸市兵庫区福原町)

松山分社 (愛媛県松山市)

尾張分社 (愛知県一宮市)

鳥羽分社 (三重県鳥羽市)

東京分社 (東京都文京区)

清水神社 境内 古刀比羅神社 (長野県長野市真島町)

新川神社 (富山県富山市新庄町)

光雲神社摂社荒津神社 (福岡県福岡市中央区)

坂本神社諏訪社 境内 金刀比羅社 (岐阜県中津川市)

他、全国の金毘羅神社など


【お祀りする寺院】

金毘羅権現は完全には消失しておらず、少数ではあるが廃仏毀釈を免れ、主に真言宗や曹洞宗等の寺院で祀られています。


象頭山金毘羅密寺(北海道札幌市)

天狗山金毘羅大本院(北海道小樽市)

紫雲山金毘羅寺(北海道登別市)

金剛山金毘羅霊院(北海道北見市)

光明山真言密寺(北海道江別市)

象頭山金毘羅寺(北海道虻田郡)

春光山円覚寺 金毘羅堂(青森県深浦町)

高尾山薬王院 金毘羅社(東京都八王子市)

千日山雨宝院(石川県金沢市)

少林山円蔵院(京都府宇治市)

大平山金毘羅院(鳥取県倉吉市)

金毘羅大権現(岡山県倉敷市茶屋町)

種松山西明院(岡山県倉敷市)

法花山金毘羅院(岡山県新見市)

円政寺 金毘羅社(山口県萩市)

象頭山松尾寺普門院(香川県仲多度郡琴平町)

宝珠山箸蔵寺(徳島県三好市)

金毘羅山満願寺(愛媛県今治市)

松尾山金毘羅寺(愛媛県東温市)

東向山理正院(愛媛県砥部町)

瑞応寺(愛媛県新居浜市)





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